おかえりなさい

くろねこのご近所に住む ちいさな可愛いおばあちゃん
おばあちゃんは時々 
庭の一角に作った菜園で 実った野菜たちを届けてくれる
それは私たちが食べきれる ほど良い量のきゅうりやらなすやら
おばあちゃんに良く似た ちいさくて可愛らしい指先ほどのミニトマトやら
冬には香りの良いゆずやら


私はお礼に仕込んだパンを おばあちゃんが食べきれる量を持ってゆく
おばあちゃんはいつも喜んでくれて
「足が弱いでな、粉モンを食べやなアカンのや ありがとな」と言ってくれる

おばあちゃんは独り暮らし
大好きなおじいちゃんが突然逝ってしまって、びっくりして
耳も聞こえなくなってしまったんや と、 そう話してくれる
だから、私とおばあちゃんの会話は成立していない
おばあちゃんは私の言葉があまり聞こえていない
でも、いつも私の手をとって
「いつまでもここでおってな、お客さんたくさん来るようにおじいさんに
毎日おがんどるでな」と言ってくれる
おばあちゃんちの玄関にはいつも男物の雪駄が揃えて置いてある
私はそれを見る度に少し苦しくなる 少し悲しくなる



お盆 たくさんの「おかえりなさい」がどこのお家でも聞かれたことでしょう


私も 大好きな友達が子供を連れて帰省してきたり 兄の家族が帰省したり
大学で他県に出ている大切なお客さまが帰省して、お店に来てくれたり
嬉しい「おかえりなさい」が続きました


 

おばあちゃんのところにも 
大好きなおじいちゃんが帰ってきてたことでしょう

少し切ない「おかえりなさい」

玄関にいつもある雪駄
その準備なのかもしれません