おまじない

私はお料理をするときに決まってする儀式があります
映画「かもめ食堂」でみた
コーヒーを淹れるときにつぶやく「コピ・ルアック」とおなじこと
謎の呪文はないけれど 単純に
「美味しくなりますように」とおまじないをするのです
パンになる粉をこねるときには「おーよしよし、たくさんふくらんでねー」
ケーキを焼くときにも「おいしくふわふわになってねー」

うちのパンを美味しいと言ってくださるお客さんの顔を思い浮かべたり
お誕生日ケーキを囲んでいる楽しそうなお客さんの姿を思い描いたり
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私の作ったものが届くその人たちに
幸福な時間がありますようにと いつもおまじないをかけるのです

たべものは立派ないきものなので
私が心を込めておまじないをすれば それに必ず応えてくれます
その証拠に おまじないを忘れた時には
同じ配合で同じ手順なのに なんだかとっても気の抜けた
パンやケーキが出来上がるのです

お客さんの「美味しかったです」の声は
どんどんおまじないに力を与えてくれます

でも 私は思うのです
美味しいって感じるのは“なにを食べるかよりもどんなときに”
なのではないのかな、と
くろねこに来てくださるお客さんは
みなさん幸せな時間をここで過ごしてくださっている
だから 私の小さなおまじないの味を発見してくださるのです
大好きな人と ご家族やお友達と 大切な自分自身と
幸せな時間を過ごすための脇役である私のお料理に
いつも幸せな声をかけてくださる 

ありがとうございます

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お客さんからのおまじないは
     一番に私がいただいてますよ